神奈川県茅ヶ崎市・藤沢市をはじめとする湘南エリアでクリニックの開業を考えている先生に向けて、家族と過ごす時間を確保しながら診療を続けるための考え方を、厚生労働省と日本医師会のデータ、湘南での建築の経験からまとめました。
「子どもの行事に出られない」「休日も病院からの電話が気になる」。勤務医として働く先生から、そうした悩みを伺うことがあります。
私たち大勝建設は、明治43年に茅ヶ崎で創業して以来、湘南のまちで建築に携わり、土地探しから設計・施工まで医院・クリニックの開業を支援してきました。開業のご相談では、理想の医療とあわせて「家族との時間を大切にしたい」というお話を伺うこともあります。
この記事の結論
- 2024年4月に始まった医師の働き方改革で、勤務医の時間外・休日労働には原則年960時間の上限ができました。週60時間以上働く病院の常勤勤務医は、令和7年の調査で15.0%まで減っています。
- 開業医は休診日や診療時間を自分で組めるため、家族の予定に合わせた働き方を設計できます。ただし、開業後に労働時間が増えたと答えた院長も41.6%いました(日本医師会、2009年)。
- 家族との時間を守れるかどうかは、無理のない診療時間で採算が合う立地選びと、住まいとの距離、院長が仕事を抱え込まない建物の工夫で決まります。
医師の働き方改革とは?勤務医の働き方はどこまで変わったか
医師の働き方改革とは、2024年4月から、勤務医の時間外・休日労働に上限を設けた制度です。上限は原則として年960時間で、地域医療を支える病院の医師や研修中の医師などには、特例として年1,860時間までの水準が設けられています。
厚生労働省の調査によると、週60時間以上働く病院の常勤勤務医は、平成28年には39.2%いましたが、令和7年には15.0%まで下がりました。ただ、診療科による差は大きく、外科は25.1%、産婦人科は22.8%と、今も4人に1人前後が長時間働いています。反対に、皮膚科は5.3%、眼科は7.7%、精神科は8.1%と1割を下回っています。
なお、この上限は病院などに雇われて働く医師のためのルールで、自分でクリニックを経営する院長には直接は適用されません。
出典:厚生労働省「(参考資料)医師の働き方改革の現状について」令和8年度 医師の働き方改革の推進等に関する検討会(2026年9月10日)※令和7年度「医師の勤務実態把握のための調査事業」
子育て世代の先生にとっての「働きやすさ」
2024年時点で、医療施設で働く医師の24.4%が女性です。当直のある勤務と、保育園の送り迎えや学校行事を両立させるのは簡単ではありません。家族の生活リズムに合わせて働く時間を決めたいという思いは、男女を問わず、開業を考えるきっかけの一つになっています。
茅ヶ崎・藤沢・湘南の医師数・診療所数から見る開業の環境
| 項目 | 神奈川県 | 全国 |
|---|---|---|
| 医療施設で働く医師(人口10万人あたり・2024年) | 233.3人(47都道府県中41位) | 267.4人 |
| 一般診療所の数(2025年) | 7,296施設 | 105,521施設 |
| 一般診療所の5年間の増減(2020→2025年) | 389施設増(+5.6%) | 2,909施設増(+2.8%) |
| 一般診療所(人口10万人あたり・2025年) | 79.4施設 | 85.8施設 |
神奈川県は人口に対して医師が少なく、医師数は全国の約0.87倍です。人口10万人あたりの診療所数も全国より少ない一方で、この5年間で診療所は389施設増え、増加率(5.6%)は全国の約2倍でした。
人口あたりの診療所が少ない地域は、患者さんを見込みやすい半面、新しいクリニックも増えています。住宅地の中でも駅や幹線道路との位置関係で集患は大きく変わるため、開業前に周辺の診療所の数と診療時間を調べ、無理のない診療時間で選ばれる場所かを確かめておくことが大切です。
開業すると家族との時間は増える?日本医師会の調査から
開業医の働き方を知る手がかりとして、日本医師会が開業医1,984人を対象に行ったアンケート(2009年)があります。勤務医時代と比べた労働時間について、「軽減した」と答えた院長は合わせて35.6%、「過重になった」と答えた院長は合わせて41.6%でした。
勤務医時代の負担として最も多く挙がったのは当直(44.5%)です。開業後は夜間の呼び出しがほとんどなくなる代わりに、スタッフの採用(65.1%)やレセプト(診療報酬の請求書類)の確認(52.2%)といった経営の仕事が負担になったと答えています。
つまり、開業すれば自然に家族の時間が増えるわけではありません。夜間や休日の拘束は減らせても、経営の仕事を一人で抱え込むと、帰宅する時間は遅くなってしまいます。(関連コラム:医師が独立を決断する5つの理由と開業を阻む3つの壁)
出典:日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」2009年9月
休みは自分で決められるが、休めば休診になる
同じ調査では、無床診療所の院長が診療する日数は週平均4.95日でした。夏休みや年末年始の休みを家族の予定に合わせて決められるのは、開業医ならではの良さです。ただし、院長が休めばその日は休診となり、収入もなくなります。休みを「取れる」ことと、安心して「休める」ことは別だと考えておきましょう。
勤務医と開業医の違いを家族の視点で比べる
| 家族との時間に関わる点 | 勤務医 | 開業医 |
|---|---|---|
| 夜間・休日の呼び出し | 当直やオンコールがある科が多い | 外来中心なら原則なし |
| 休みの決め方 | 病院のシフトしだい | 休診日を自分で決める |
| 子どもの行事への参加 | 交代の医師がいれば調整しやすい | 休診にするか代診を頼む |
| 通勤 | 勤務先の場所しだい | 開業地を選べる(医院併用住宅も可能) |
| 収入 | 給与で安定 | 経営の状況で変わる |
家族との時間を守るクリニックづくり 4つのポイント
ポイント1:家族の予定から診療時間を組み立てる
送り迎えに間に合う診療開始時間、週1日の午後休診など、まず家族の予定から診療時間を決め、その時間でも採算が合うかを確かめます。順番を逆にして「患者さんが集まりそうな時間」から決めると、家族の時間は後回しになりがちです。(関連コラム:クリニック開業資金の現状と賢い調達)
ポイント2:患者さんが来やすい場所を選ぶ
湘南エリアは、ファミリー層からシニア層まで幅広い世代が暮らす地域です。住宅地で開業する場合は、車に加えて自転車や徒歩で来る患者さんも多いため、駐車場とあわせて駐輪場の確保も患者数を左右します。大勝建設は不動産業も営んでおり、土地探しの段階から診療圏調査を行い、「この場所なら希望の診療時間でも採算が合うか」を確認したうえで計画を進めます。
ポイント3:昼休みに院長が一息つける部屋をつくる
診察の合間に一人で休める院長室と、スタッフが気兼ねなく食事できる休憩室があると、午後の診療を落ち着いて迎えられます。スタッフ用の通路を設けて、受付・診察室・処置室を短い距離で行き来できるようにしておくと、診療後の片付けも早く終わります。(関連コラム:クリニック設計で押さえたい6つのポイント)
ポイント4:住まいとの距離を考える
海沿いの穏やかな住環境が魅力の湘南エリアでは、クリニックと住まいを一つにする「医院併用住宅」で、家族との時間やこの地域ならではの暮らしを楽しむ時間を生み出しやすくなります。その場合は、クリニックと住まいの玄関や動線を分け、仕事と生活を切り替えられる間取りにしましょう。海に近い立地では、塩害(潮風による金属のさびなど)に強い外装材や設備を選ぶことも欠かせません。
院長1人で診療を続けていると、休みにくさはなかなか解消しません。将来、非常勤の医師を迎えられるよう、診察室をもう1室増やせる余裕を残しておくのも一つの方法です。(関連コラム:クリニック開業の失敗リスクと回避方法)
大勝建設が手がけた医療施設の院長の声
まつうら動物病院(茅ヶ崎市):診療時間を守り、自宅兼病院に
動物病院の事例ですが、院長の働き方の考え方は医院・クリニックにも通じます。松浦院長は、勤務時代の過酷な労働環境の経験から、スタッフが仕事とプライベートをはっきり分けられるよう、診療時間をしっかり守る運営を大切にしています。テナントでの開業を経て、大勝建設の施工で自宅兼病院を新築しました。(院長インタビュー(まつうら動物病院))
シーサイドアニマルクリニック:駐車場2台のテナントから移転
テナントで開業した当初は院内が狭く、駐車場も2台分しか確保できなかったため、広い場所への移転を考えていたそうです。そこで、アクセスしやすい広い車通り沿いに土地を確保し、住居兼病院を建てました。駐車場の台数は、患者さんの来院しやすさだけでなく、院長とスタッフの毎日の負担にも関わります。(院長インタビュー(シーサイドアニマルクリニック))
大勝建設では、はしもと脳神経外科クリニック、平野子どもクリニック、茅ヶ崎市立病院別棟などの医療施設も手がけています。
よくある質問
Q. 子育て中でもクリニックを開業できますか?
A. できます。診療開始を遅らせる、平日に午後休診の日を設けるなど、家族に合わせた診療時間を組めます。その時間で経営が成り立つかは、開業前に診療圏調査と事業計画で確かめておきましょう。
Q. 医師の働き方改革は開業医にも関係がありますか?
A. 時間外・休日労働の上限は雇われて働く勤務医が対象で、院長自身には直接は適用されません。ただし、クリニックで医師を雇う場合は、その医師に上限が適用されます。
Q. 開業医は勤務医より休みが取りやすいですか?
A. 休む日を自分で決められる点では取りやすいといえます。日本医師会の調査では、無床診療所の院長の診療日数は週平均4.95日でした。ただし休む日は休診になるため、代わりの医師を迎えられる体制づくりが大切です。
Q. 茅ヶ崎・藤沢・湘南でワークライフバランスを重視してクリニックを開業するには?
A. 神奈川県は人口あたりの医師・診療所が全国より少ない一方、診療所はこの5年で増えています。車・自転車・徒歩など来院手段が多様な地域のため、駐車場と駐輪場を十分に確保したうえで、スタッフ専用の動線や院長室・休憩室など毎日の働きやすさにつながる設計を組み合わせることが大切です。医院併用住宅にする場合は、海に近い立地での塩害対策も検討します。
まとめ
- 働き方改革で勤務医の長時間労働は減りつつありますが、外科や産婦人科では今も4人に1人前後が週60時間以上働いています(令和7年調査)。
- 開業すると夜間の呼び出しは減る一方、採用や請求事務などの経営の仕事が増えます(日本医師会、2009年)。
- 家族との時間は、診療時間の決め方、立地、住まいとの距離、建物の工夫を開業前にそろえることで守りやすくなります。
大勝建設では、茅ヶ崎・藤沢をはじめとする湘南エリアで、働き方にゆとりのあるクリニック開業を検討している先生のご相談を承っています。
- 「子どもが小さいうちに、働き方を変えたい」
- 「家族の予定に合わせた診療時間で、経営が成り立つか知りたい」
- 「住まいとクリニックの距離をどうするか相談したい」
計画が具体的に決まっていない段階でも、お気軽にご相談ください。
この記事について
執筆:ドクター建築ラボ@SHONAN(大勝建設)。明治43年(1910年)茅ヶ崎で創業(創業115年)。
監修:大勝建設株式会社 代表取締役社長 加藤順一
主な参考資料:厚生労働省「医師の働き方改革の現状について」(2026年9月)、厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」(令和2年・令和6年)、厚生労働省「医療施設(動態)調査」(令和2年・令和7年)、日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」(2009年)
お問い合わせ・会社情報
大勝建設株式会社
神奈川・茅ヶ崎・藤沢・湘南エリアの医療建築・住宅設計施工のスペシャリスト。先生の夢に寄り添い、経営を支える建物をご提案します。
本社所在地:〒253-0055 神奈川県茅ヶ崎市中海岸1丁目1-58
電話番号:0467-86-2600
事業内容:医療施設建築・設計・施工、住宅設計・施工、リフォーム・リノベーション、バリアフリー、不動産
私たちと一緒に、ローリスクで開業を成功へと導きましょう!


